演 者 名 所 属 演題記号1 演題 抄 録 演題記号2 演題2 抄 録2
佐藤義英・教 授 生理学講座 N-1 摂食嚥下の生理学 日本は超高齢社会に突入し、高齢化の進行は世界で類を見ないほど加速しています。加齢により口腔機能が低下するため、摂食、咀嚼および嚥下が困難な方が今後更に増加すると予想されます。また、肺炎は、現在日本の死亡原因第3位であり、高齢者の肺炎の多くは誤嚥性肺炎によるものです。このようなことから、嚥下に適した食塊形成を行うために、咀嚼と嚥下の関係およびその制御機構を解明することは極めて重要と言えます。本講演では摂食嚥下と呼吸の特徴、摂食嚥下の末梢性・中枢性制御機構、嚥下の加齢変化について述べ、本講座が行ってきた研究についても簡単に紹介したいと思います。 N-2 痛みの生理学 歯科医院を訪れる患者さんの多くは、顎顔面口腔領域の痛みが主訴であると思います。痛みは、どのような神経機構により受容され認知されるのでしょうか?痛みは最初に受容器が興奮し、次に活動電位が感覚神経を伝導し、脳に到達し意識として生じます。これらの特徴や仕組みを理解することは、治療の一助となると言えます。本講演では痛覚の種類、侵害受容器の特徴、口腔感覚の特徴や痛覚伝導路について述べ、本講座が行ってきた研究についても簡単に紹介したいと思います。
高橋 睦・准教授 生理学講座 N-3 ガイドラインに基づくマウスガード製作のポイント 2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を控え,国民のスポーツに対する関心は高まっています。同時にスポーツ人口は増加の一途を辿り,スポーツ中のケガの発生頻度も増しています。スポーツに関する基本方針を定めた「スポーツ基本計画」(文部科学省)に,「マウスガード着用の効果等の普及啓発を図る」という文言が明記されたことを受けて,日本スポーツ歯科医学会は良質なマウスガードの製作・提供に向けた取り組みを開始し,標準的なマウスガードの製作方法を普及するためのコンセンサスの形成がなされました。
そこで今回は,日本スポーツ歯科医学会の提言するガイドラインに則った標準的なマウスガードの製作法のポイントをご紹介させていただきます。また,マウスガード製作の基本となるシートの成形法(サーモフォーミング)や使用器材の特性,成形器の活用法についてもお話させていただきます。



岡田康男・教 授 病理学講座 N-4 「わからない口腔粘膜疾患」二刀流で 日常臨床では,口腔粘膜のカンジダ症,白板症,紅板症,扁平苔癬,腫瘍など診断に苦慮する疾患に遭遇することがしばしばある.これらの疾患は「レッド」,「ホワイト」,「イエロー」,「ブルー」などの色タイプや「皿」,「山」,「イボ」,「ドーム」などの隆起タイプに分類することで明日からの診断,治療に活用できる.その詳細を最新の疾患概念に基づき,二刀流(口腔病理専門医と口腔外科専門医・指導医)の立場で,口腔粘膜の見方から検査,診断,治療のポイントまでをわかりやすい内容で解説する. N-5 「今どきの顎骨病変」診断と治療は 顎骨には炎症,嚢胞,歯原性腫瘍,やビスフォスフォネート関連顎骨壊死(MRONJ)など様々な疾患がみられ,しばしば診断や治療に苦慮する.これらの疾患の診断,対応(医歯薬連携),MRONJに対する治療について数多くの問合せを受けている.そこで口腔病理専門医と口腔外科専門医・指導医を併せ持つ立場から,疾患の発生原因,臨床所見,診断からMRONJに対するテリパラチドによる最新の治療法などを紹介し,そのポイントをわかりやすい内容で講演する.
柬理頼亮・講 師 病理学講座 N-6 病理学よ、もう一度!唾液腺疾患編 嚢胞、歯髄炎、扁平上皮癌、多形腺腫、腺様嚢胞癌…学生時代、顕微鏡の操作に悪戦苦闘しながらプレパラートを観察し数々の疾患症例を苦労してスケッチした病理の実習帳。今、どちらにお持ちですか?
病理学講座では開業歯科から紹介される様々な口腔疾患に対応し、日夜診断の精度の向上を目指しています。今回は唾液腺疾患を中心に炎症性疾患、良性腫瘍、悪性腫瘍に大別し実際に当講座が診断してきた典型的な病理組織像と口腔内所見とを照らし合わせながら診療にあたって留意すべきポイントをわかりやすく解説いたします。また、近年の観察方法の変遷について当講座で学生教育に用いているVirtual Slide TMを実際に操作しながら知っていただきたいと思います。この機会にかつて接眼レンズの向こう側にみえた組織変化の世界を再び見直してみるのはいかかでしょうか



葛城啓彰・教 授 微生物学講座 N-7 歯周炎への抗菌薬投与と耐性菌問題の現状  近年、歯周炎治療における抗菌薬投与の是非が話題になっています。歯性感染症全般にはβラクタム系が第一選択として使用されていますが、歯周炎治療において局所投与では唯一ミノサイクリンが使用可能であり、全身投与ではマクロライド系の1つであるアジスロマイシンが主として使用されるようになってきています。これらの各種抗菌薬の薬剤感受性試験、血中半減期、PK/PDパラメーター、組織・細胞への移行性、バイオフィルムに対する作用、副作用の観点から通常の歯周治療に反応性を示さない場合に、多角的にどの抗菌薬を選択すべきかを考えてみたいと思います。また、抗菌薬の使用に伴い必ず耐性菌は出現します。そこで、MRSAやMDRPを中心に現在院内感染の主要な原因菌でもあるこれらの多剤耐性菌の現状と対策についても考察してみたいと思います。 N-8 ATP拭き取り検査による歯科診療環境の汚染状況とその対策 外来診療が主たる診療環境である歯科医療では、リアルタイムに汚染状況を把握し対応することが重要である。ATP拭き取り検査法は、従来の細菌検査法に比較して簡便かつチェアサイドでリアルタイムに汚染状況を把握することが可能であり、その後の対応および汚染除去の効果判定も容易である。また、今回紹介するATP拭き取り検査法(A3法)は、ADP,AMP,AMPの同時測定によりより幅広い種類の汚れを高感度に検出することが可能でありランニングコストも1件体当たり240円前後と比較的安価である。今回は、実際に新潟病院および地域の関連病院での実際の検査データをもとに、ATP拭き取り検査法の実際と汚染への有効な対応法について紹介するとともに簡単なデモンストレーションを行う予定である。また、近年のIT化に伴う医療現場での電子関連機器の汚染状況についても報告する。
小松崎 明・教 授 衛生学講座 N-9 幼児期における効果的な口腔管理手法と歯科保健指導 近年,年少人口の減少とともに幼児を対象とする継続的な口腔管理の重要性が注目されるようになってきた。特に幼児期には、継続的な個人口腔保健管理と、セルフケアの
習慣形成が重要視されている。
本講演では、保育園園を対象として実施した連絡帳型口腔管理手法を紹介し,レーザー透光型機器を活用した咬合管理から得られた口腔診査のポイントについても解説する。また、保育園での指導管理と歯科医院での専門的管理の連携について考察を図り、
地域に貢献できる歯科医院の今後の姿と,地域歯科保健活動の未来を考えてみる。



小野幸絵・講 師 衛生学講座 N-10 衛生学の立場から患者さんに伝えるべきこと 「歯科医師は、歯科医療及び保健指導を掌ることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。」と歯科医師法第1条に規定されています。このことからわかるように歯科医師にとって公衆衛生の知識は必要不可欠であります。臨床が診断と治療に重きをおいているのに対して衛生学は予防に重点をおき、あらゆる健康状態の人を対象としています。私たち歯科医師が臨床と衛生学との関係を認識し、現在の歯科疾患の疫学的特徴、地域における保健活動などを知ることは臨床の場で患者さんに接する上で重要なことと思われます。本講演では現在の衛生学がどのように臨床にリンクし、患者さんに治療・説明するうえで重要かをお話してみたいと思います。


北島佳代子・准教授 歯科保存学第1講座 N-11 ステンレススチール(SS)ファイルとニッケルチタン(NiTi)ファイルを上手に使い分ける 根管拡大形成用のSS製手用リーマーやファイルは、国際規格(ISO)により刃部先端の角度、刃部の長さとテーパー等が規定されており、その形状に基づいたリーミングやファイリング操作を行うことにより理想的な拡大形成が可能であり、同規格のガッタパーチャポイントを正しく選択・調整することで緊密な根管充填と良好な予後が期待できます。しかし狭小な湾曲根管では、プレカーブやステップバック法などを用いても、時に困難を極めます。現在、超弾性の形状記憶合金であるNiTi製ファイルが普及し、湾曲根管の拡大形成に威力を発揮しています。その際、切削効率を高めるために専用のロータリーエンジンに装着し、回転させて用いるのが基本となっています。またファイルの断面形状やテーパーもメーカーによって特徴があり、使用法を誤ると根管内破折を生じる危険を伴います。本講演では、SSファイルとNiTiファイルを上手に使い分け、効率的で安全な根管拡大形成を行うためのポイントについて考えてみたいと思います。 N-12 高齢化社会に多発する狭窄根管へのアプローチ〜進化した根管治療の現状〜 近年、口腔衛生の向上、予防歯科医学の発達、歯の保存の推進などにより歯の寿命が延長し、ブラッシング励行の結果、老若を問わず、根管口部の石灰化、狭窄、閉鎖傾向の著しい歯が増加し、根管探索の困難な症例が増えています。さらに高齢化社会を向え、根管の加齢変化に加え、長期にわたる機械的・冷温熱的・化学的刺激、齲触、歯周疾患などによる狭窄傾向はますます強くなると予測されます。このような歯に対する歯内治療は困難を極めますが、その成功の可否はその後の補綴治療を含め、自分の歯で生涯にわたり長く咬むというニーズに反映することになります。必要のない根管治療は避けるべきであり、必要な治療は予後も含め成功率を高めなければなりません。そのためには、歯内治療の必要性の有無を正しく判断し、治療上の注意点を把握することが大切です。本講演では、最新の歯内治療用機器を紹介しながら、狭窄根管治療のポイントを解説したいと思います。
新井恭子・講 師 歯科保存学第1講座 N-13 実験結果からみたNiTiファイルの使用法について 超弾性を有するNiTiファイルによる根管拡大形成は、術前の根管の湾曲に沿って行うことができ、拡大形成前後の根尖孔の位置のずれが起きにくいことが分かっています。そのため湾曲根管の拡大形成に優れており、術者のスキルに関係なく良好な拡大を行うことができるため、日本でも普及が進んでいます。また、ファイルのテーパー、断面形態、使用方法、材質、トルクコントロールエンジン等の改良がなされ、現在でも進化を続けています。当講座では、主なNiTiファイルについて、透明湾曲根管模型を用いて実験を行い、その結果からNiTiファイルによる拡大形成後の根管の形態、拡大時にかかる荷重の大きさ、NiTiファイルの利点と欠点などについて考察を行ってきました。そこで、本講演では、当講座の実験結果に基づき、NiTiファイルの効果的な使用法について解説をしたいと思います。


田久昌次郎・客員教授 歯科保存学第1講座 N-14 己の欲せざるところ、人に施すこと勿れ。  これは『論語』の中の有名な言葉です。市場原理の厳しい競争社会にあって、歯科医療の真髄、患者さんのためになる歯科医療とは、この言葉に尽きるのではないのでしょうか。「自分がして欲しい治療を患者さんに行う」、簡単なようでなかなか実践するのは難しいものです。
古臭い言葉の羅列かもしれませんが、中国古典思想を学んで来たなかで、現代社会に、歯科医療に、それらを活かす術を一緒に考えたいと思います。
また、辛い経験ではありましたが、東日本大震災を体験し多くの方々から御支援を賜りました。恩に報いるためにも経験の中から感じたことをお話し出来ればと存じます。



新海航一・教 授 歯科保存学第2講座 N-15 歯科用レーザーを用いた齲蝕治療の新たな展開 多種類の歯科用レーザー装置が開発され、現在臨床で使用されています。齲蝕治療において検査と診断が重要であることはいうまでもありません。波長655nmの半導体レーザーを用いた齲蝕診断装置、DIAGNOdentが齲蝕診断に活用されています。また、修復治療において窩洞形成加算が保険収載されていますが、Er: YAGレーザーは切削効率が低いようです。一方、欧米で使用されているEr, Cr: YSGGレーザーは、ハイドロキネティック(レーザー光のエネルギーを吸収した超加速水分子が硬組織を破壊する)により、エアタービンに匹敵する高速切削を可能にしています。当講座では、Er, Cr: YSGGレーザー(Waterlase MD)を用いた歯の切削方法と切削歯面に対する接着方法の確立について研究を進めております。また、レーザーによる根面歯質の耐酸性強化や齲蝕象牙質の殺菌そして直接覆髄法への応用に関する基礎的研究も行ってきました。これまでの研究成果を紹介しながら、歯科用レーザーを用いた齲蝕治療の新たな展開について解説したいと思います。 N-16 審美修復を支える確実な接着の理論と実践 接着システムと修復材料の発展は歯科治療に大きな変革をもたらしました。コンポジットレジン修復は、MIコンセプトの具現化によって健全歯質の犠牲を最小限に留めた審美修復を可能にしています。また、保険収載されたCAD/CAM冠やセラミック修復物の装着には、確実な被着面処理を行った後に、デュアルキュア型レジンセメントあるいはMMA-TBB系レジンすなわちスーパーボンドを用いた接着が必須です。さらに、歯冠修復物の補修にも接着システムが必要です。歯質接着システムはセルフエッチシステムが主流となり、なかでも接着処理が簡便なワンステップ型セルフエッチシステム(オールインワンアドヒーシブ)が多用されているようです。昨今では、歯質のみならず金属やセラミックスに対しても接着性を有するユニバーサルボンド(汎用型接着)システムが開発されるに至っております。もはや「接着」は審美修復の根幹であり、その成否は修復物の予後に大きな影響を及ぼします。そこで、審美修復において確実な接着を得るための接着理論と実践(症例解説)についてお話ししたいと思います。
佐藤 聡・教 授 歯周病学講座 N-17 歯周組織再生療法と審美的改善を考慮した歯周外科治療法の臨床応用 歯周外科治療では、歯根面に残存する感染源を除去し臨床的アタッチメントレベルを改善、さらにプラークコントロールの行い易い環境へと歯周組織を再構築することが求められる。従来この目的を達成するための術式として歯周組織再生誘導法(GTR法、エムドゲイン等)などを含む歯周ポケット減少法が臨床応用されてきた。近年、歯周治療、インプラント治療を含む歯科治療全般にわたる患者側の要求の多くは、疾患に対する原因の除去、機能回復に加え審美的な改善にある。日本国内においては、メンブレンを用いたGTR法が2008年から保険導入され、さらにエムドゲインを用いた再生療法も先進医療として承認され、臨床応用されるに至っている。
今回は、従来臨床に応用されている歯周組織再生療法に加え、審美的改善を目的とした露出歯根面に対する術式などのティッシュマネージメントの基本となる適応症とその術式、さらにその予知性について紹介をする。
N-18 メタボリックシンドロームと歯周病との関係 〜口からはじまる体の健康〜 歯周病の罹患率は、平成17年歯科疾患実態調査によると45〜54歳で88%と高い水準となっている。歯周病は口腔内に棲息する細菌に対する歯周組織局所の生体防御機構の反応により炎症が惹起されるバイオフィルム感染症といわれている。さらに歯周病の発症または進行過程では、バイオフィルムの感染に加え、環境因子、宿主因子が関与している。
一方、メタボリックシンドロームは、内臓脂肪症候群などと呼ばれ国内において2005年の内科系8学会の診断基準でも内臓脂肪型肥満を基本に血糖、脂質、血圧の異常の内2項目以上あるものと定義されている。2005年の国民健康調査では慢性歯周炎の発症時期とほぼ同じ40〜70歳で有病者920万人と考えられている。
今回は、歯周病の病態とその発症のメカニズムを通し、近年明らかとされてきたメタボリックシンドロームとの関係を解説するとともに、歯周治療における予防と炎症のコントロールについて述べたい。
小出 馨・教 授 歯科補綴学第1講座 N-19 患者さんに喜んでもらえる義歯治療 ―見た目が良く,何でも美味しく食べられる― 100歳以上の方々が7万人に達した日本では,今後さらに有床義歯の特に難症例の増加が必至です.ご高齢な患者さんにとって装着している義歯は,日々の生活の質を大きく左右し,患者さんの心身の健康に,さらには人生そのものに大きく影響を及ぼします.
義歯による適正な歯列の再建は,咀嚼,嚥下,呼吸,発音,口腔感覚,姿勢維持,身体運動,審美性等の機能回復はもとより,前頭前野をはじめとする脳機能の活性化,生きることへの意欲の回復にまで影響し,極めて大きな役割を果たしています.
また近年,患者さんから義歯治療に対する機能と審美に関する具体的で高度な要望がはっきりと提示されるようになってきており,治療内容の更なる高度化が強く求められているのです.
この講演では,患者さんが満足して喜んでもらえる義歯治療について,特に“見た目が良く,何でも美味しく食べられる義歯作り”を達成するための臨床上のポイントを具体的にわかりやすくお示しします.
N-20 臨床が楽しくなる咬合治療 − 咬合と顎関節をわかりやすく− 近年,いよいよ咬合と顎関節が注目されています.歯科だけが行える咬合治療は顎関節と密接に関連し,顎口腔系の重要な機能,すなわち咀嚼,嚥下,呼吸,発音,口腔感覚,審美,姿勢維持,身体運動能力,さらには健康寿命にまで大きく影響を及ぼします.
また近年,患者さんから咬合が全身に及ぼす影響や,その不調和に由来する様々な症状についての問い合わせが大変多くなってきており,患者さんの咬合に対する認識が大きく変わってきていることを痛感させられます.私達歯科医師には,専門領域である咬合と顎関節に関する十分な理解と治療内容の更なる高度化が強く求められています.
この講演では,日常チェアサイドで簡便に行える顎関節の診断基準,顎関節症の各種病態への効果的な対応など,私たち歯科医師が日々の臨床でおさえておくべき咬合と顎関節に関する重要事項を,なるべく臨床に即して具体的にわかりやすくお示しします.
佐藤利英・准教授 歯科補綴学第1講座 N-21 リンガライズド・オクルージョンの臨床応用基準について 補綴臨床における治療の原則は『残存組織の保全と機能回復率向上』の両立であり,これに基づいた予知性の高い治療を行う必要があります.そして,その鍵となっているのが咀嚼に直接影響を及ぼす咬合様式です.咬合様式は,従来から様々な研究によって数多く考案されておりますが,歯列を支える残存組織の支持能力に応じたものを選択しなければなりません.しかし日常臨床では,咬合構成にあたり極めて長時間を要するうえに機能的にも多くの問題を抱えているフルバランスド・オクル−ジョンが一般的であり,その対応に苦慮されている先生方も少なくないと思われます.
本講演では,有床義歯のみならず応用範囲が広く,近年の詳細な比較研究によって義歯の安定性,機能性などに優れた有効性の高いリンガライズド・オクルージョンについて,その理論と有効性を研究結果と症例を通して確認したいと思います.
N-22 リンガライズド・オクルージョン用ブレードティースの効果について 歯が喪失して無歯顎になると歯列を支える支持組織の支持能力は,一般に健全有歯顎者の1/5,顎堤吸収が著名になった場合には1/10以下に著しく減衰します.そのため,総義歯に構成する咬合様式は,両側性平衡型リンガライズド・オクルージョンがフルバランスド・オクルージョンと比較して機能時の食品溢出効果が高く,咬合接触面積も小さいため有利であることが明らかにされています.またリンガライズド・オクルージョンを構成するうえでは,上顎臼歯部の舌側咬頭をブレード化することにより,さらに食品溢出効果を高め,咬合接触面積の減少が可能となることで,残存組織保全と機能回復率向上の両面から有利となります.
本講演では20年間にわたり臨床応用を通して比較検討してきたブレードティースの有効性と,新しく考案したリンガライズド・オクルージョン用4歯連結硬質レジンブレードティースの臨床にあたっての効率的な排列法についても確認したいと思います.
水谷 史・准教授 歯科補綴学第1講座 N-23 咬合器の顆路調節 日常臨床において重要な咬合診断、補綴装置の製作には、患者さんの上顎に対する下顎の動きを咬合器上に正確に再現することが必要不可欠となります。下顎運動の再現には、適切な下顎運動記録法で、適切な下顎運動の記録を行う必要があります。また、下顎運動を再現することができる調節機構を備えた咬合器を使用することが有効となります。
 この講演では、私達が日常行い、また学生実習でも教育している咬合器の顆路調節法について、フェイスボウトランスファーも含めて解説させて頂きます。明日からの臨床で使える、短時間で行うことができる顆路調節法を習得して頂き、咬合診断や補綴装置の製作に活かして頂きたいと思って居ります。



渡邉文彦・教 授 歯科補綴学第2講座 N-24 適切なインプラント治療と健康維持、増進 インプラント治療は失われた口腔内の機能を改善し、その結果として全身の健康維持に大きな役割を果していることは疑う余地もない。これらの患者の機能を回復することは、当然咀嚼機能の向上を図ると共に、唾液分泌を促し、脳の働きにも影響することが分かってきている。しかし、その一方でインプラント治療のトラブルも報告されているが、インプラント治療の予後は10年で95%、20年で80%残存することが多くの報告でなされている。このような点から加齢を考慮したインプラント治療計画立案し、介護が必要となった場合どのようにインプラント治療患者のケアを行えば良いのかが問われ始めている。介護が必要となったインプラント治療患者は場合により、上部構造を固定式から可撤式上部構造に変換することも必要である。インプラント治療のゴールは患者がこの世を去る時、インプラント治療を受診して良かったと思えることであると考える。 N-25 今日求められる審美修復 二十世紀後半より、審美修復として陶材焼き付け鋳造冠が使用されてきたが、マージン部のメタルカラーによる黒ずみや、金属アレルギーさらに対合天然歯の摩耗などが問題となってきている。このようなことからCAD/CAMによるジルコニアフレームへの陶材を築成焼成するオールセラミックス修復が臨床応用されている。オールセラミックスの術式は陶材部のチッピングの問題が指摘されるが、これらの原因はジルコニアコーピングの設計や、咬合調整、ジルコニア界面と陶材との接合の問題に起因してことが報告されている。これらオールセラミックスクラウンの臨床応用についてまた今後の問題点について考察、報告する
上田一彦・准教授 歯科補綴学第2講座 N-26 トラブル症例から学ぶインプラント治療 現在,インプラント治療は欠損補綴の1つとして日常臨床に多く取り入れられ,QOLの向上に重要な審美,機能回復において治療後の患者満足度は高いものとなっています.しかし,インプラント治療において様々なトラブルが起こっており,中でも上部構造に関するものは,頻度が高いとの報告があります.そこで今回,私が新潟病院口腔インプラント科にて遭遇した上部構造に関するトラブルについて,また,そのトラブルについてどのように対処したかをご覧頂き,皆様とともにインプラント治療について考えていきたいと思います.


田中 彰・教 授 口腔外科学講座 N-27 地域包括ケアシステムに向けた歯科診療所のあり方と基本的な知識 現在、各地域において地域包括ケアシステムの構築が進められている。これは、要介護高齢者が、住み慣れた地域で最後まで暮らせることを目的に、医療・介護・予防・住まい・生活支援などの様々なサービスを一体的に提供する体制で、様々な職種が関わりながら、各地域で体制づくりが行われている。この実現に向けて、急性期医療と在宅医療、医療と介護・福祉の連携強化が重要となり、歯科も医療介護ネットワークの一員としての役割分担が求められている。地域の歯科医師に対して、患者にとって生涯を通じて身近な「かかりつけ歯科医」としての医療機能の向上への期待が高まっている。歯科疾患の管理が必要な患者に対し、定期的かつ継続的な口腔の管理を行う高度な診療機能と医療環境が求められるようになった。本講演では、来るべき新時代にマッチした歯科医師として求められる種々の基本的事項として、システムの概要と必要なスキルを概説したい。 N-28 日常臨床で遭遇するがん患者の口腔症状と口腔管理 各種がん治療で様々な要因から発生する口腔環境の悪化と継発する合併症により、治療完遂率の低下や治療(入院)期間の延長、QOLの低下が生ずることが問題視され、がん患者の口腔衛生・歯科的管理の重要性が増している。特に周術期や抗がん剤治療、造血幹細胞移植等における感染防止予防策、口腔粘膜炎軽減策として、口腔管理・口腔ケアが注目されている。平成24年4月の診療報酬改定により、がん患者等の周術期等における歯科医師の包括的な口腔機能の管理等が評価され、周術期口腔機能管理料などが新規収載された。全国各地でナショナルテキストを用いた医科歯科連携講習会による研修が行われているが、内容は多岐にわたり、実際の臨床では不安材料も多いのが現状である。そこで、新潟県立がんセンターにおける医科歯科連携の経験から、周術期口腔管理の要点と基本的な対応について平易に講演する予定である。
小林英三郎・講 師 口腔外科学講座 N-29 MRONJ(Medication-Related Osteonecrosis of the Jaw)に対する積極的治療  ビスフォスフォネートやデノスマブなどは、骨粗鬆症患者の骨折の予防、または悪性腫瘍の骨転移性腫瘍や多発性骨髄腫において、高カルシウム血症・骨病変の進行を防ぐ目的で用いられています。しかし、その副作用として2003年に顎骨壊死が発表されて以来、徐々に医師・歯科医師以外の方にも認知されるようになりました。しかしながら、現在に至っても、本病態に対して十分なエビデンスが得られている治療法や口腔ケア・口腔管理方法はなく、経験に基づき行われているのが現状です。さらに、患者数については、日本口腔外科学会が行った全国実態調査において、MRONJ患者は、2006 2008年調査で263症例、2011 2013年調査では4797症例とおおよそ18倍と著しく増加しており、今後も増加することが予想されます。講演ではMRONJに対する積極的な治療についてお話しさせていただきたいと思います。


藤井一維・教 授 歯科麻酔学講座 N-30 医療安全のコンピテンシー コンピテンシーという用語は、各々の分野で意味の異なった使われ方がされていますが、ここで使う意味は「「傾聴力」「論理思考」および「複雑な課題に対応することができる力」というニュアンスです。
 医療安全の構成要素は、全身管理・システム・法規を含めた倫理観・コミュニケーション(医療面接)等々多方面におよびます。特に、全身管理の成功の「鍵」は情報の数とその処理能力といえるでしょう。患者の急変を不運な天災という人もいますが、人災(情報確認不足・収集不足)によるものもかなりあるはずです。日常の対診も必要不可欠な行為であり、それに伴う臨床検査データを“読む”ことは、これからの歯科では避けては通れないことです。昨今の歯科医師国家試験問題がその象徴とも言えるでしょう。
 この講演では、我々の周りに散乱する医療安全に関する情報をどのように整理し、それをどのように活用するかの一助をお話致します。
N-31 全身管理のコンテンツ・コンテクスト コンテンツという用語は、内容、中身と訳されますが、実際には情報の内容や中身など「情報」のニュアンスが強いものです。また、コンテクストという用語は主に文脈と訳されますが、背景、状況または行間的ニュアンスがあります。
 安全安心な歯科医療を推進する上で、全身管理は、今や避けては通れない必要不可欠なものです。医療機関から処方されている内服薬等に関する情報を医療面接やお薬手帳から得るのは当然ですが、その得た情報の深さやポイントをつかむことは非常に難しいものです。また、新薬も次々と開発されています。医科の薬剤の緊急安全性情報(イエローレター)や安全性速報(ブルーレター)を「歯科じゃないから関係ない。」とゴミ箱に直行する時代ではありません。
 この講演では、このコンテンツやコンテクストをどのように収集し、どのように整理して、それを活用するかについてお話致します。
佐野公人・教 授 歯科麻酔学講座 N-32 歯科診療室におけるリスクマネージメント 高齢社会の到来とともに、循環器疾患や呼吸器疾患などの全身的基礎疾患を有する患者が、外来患者として歯科へ受診する機会も増加しつつある.
 大部分の症例は、通常の健常者と同様の対応で差しつかえはないと考えられるが、全ての行為がストレスとして作用する可能性のある歯科治療では、時に侵襲に対する生体反応が、内因性カテコールアミンの遊離を促し、全身的基礎疾患の増悪に繋がる場合がある.したがって、有病者における歯科治療時の絶え間ない全身状態の観察は、必須事項であり患者急変時の対応は迅速・的確でなければならない.
 近年、各種生体観察モニター機器の開発で、簡便で低価な呼吸循環動態監視機器が発売されている.本講演ではこれら呼吸・循環モニターを駆使した患者管理を中心に、安全な歯科治療について概説したい.



秋山麻美・講 師 歯科麻酔学講座 N-33 こんな患者さんが来院されたらどうする?
医療面接から得られる情報とその後の対応
現在、高齢社会となり、有病者の来院、最近ではパニック障害、不安神経症などの患者さんも増加しています。このような患者さんは、病院に通院してコントロールされている、健康診断などで指摘されているが病院には行っていない、途中で自己判断によって通院を中止しているなど様々です。
歯科臨床では、神経原性ショック、過換気症候群、アナフィラキシーショック等の全身的偶発症への対応だけでなく、高血圧や心疾患など基礎疾患の急性増悪への対応も必須となっています。そのためには事前に患者さんから医療面接で情報を得ることが重要となってきます。本講演では、日常臨床で遭遇する全身的疾患を中心に“どのような医療面接を行い、どのような治療方針が良いのか”について実際の症例を通して解説し、さらに安全への対策等についてお話をしたいと思っております。



亀田 剛・講 師 歯科矯正学講座 N-34 トラブル回避からみた医原病対策−院内感染対策としての消毒・滅菌から歯面刷掃・金属アレルギー対策まで いかなる理由があれ、歯科治療におけるトラブルは回避されなくてはならない。何らかの理由で回避できなかった場合には、可及的速やかかつ円満に解決されなくてはならない。患者の心に芽生えたトラブルの種はある原因により引き金が引かれ、ある日突然、顕在化する。その原因の一つが「医原病」である。歯科医療における狭義の「医原病」としては偶発症や偶発事故が挙げられる。他に問題となるものとしては、それが院内感染の原因になるもの、もしくはそれに起因した症状の悪化やリスクを飛躍的に上げてしまうもの、器具器材の滅菌や歯面刷掃の不備などが挙げられる。本講演では、歯科矯正治療等における偶発事故、偶発症、また矯正分野に限らず器具器材の消毒滅菌、そして、歯面刷掃、それに伴う金属アレルギーに対するリスクの上昇などを含めて、我々のグループの最新の研究結果を交え、通常とは違う視線からお話していく。


長谷川 優・講 師 歯科矯正学講座 N-35 咬合誘導・矯正医の視点から 学校検診で不正咬合を指摘されたお子さんは、保護者に連れられて、まず、かかりつけの歯科医院を受診することがほとんどです。また、乳歯列期からずっと通院していた患者さんが、成長していくに従って不正咬合の様相を呈してくることもあります。成長期における咬合誘導に際して、「形態や機能の異常を早期に発見するには?」、「積極的にこれに関与していくには?」、「正常な発育へ軌道修正するには?」、「不正咬合の改善はいつがいい?」など日常臨床の中で疑問は尽きないことと思います。「形態や機能の異常を早期に発見し、積極的にこれに関与し、正常な発育へ軌道修正したり、改善したりしようとする」ことが動的な咬合誘導の目的です。積極的な咬合誘導に向けた実践編として、成長発育期の患者さんに短期間で効果的な治療を行うためにはどうするかを、症例を示しながら、矯正装置の選択や使用方法もあわせてお話ししたいと思います。 N-36 MTMのススメ・手持ちのカードを増やしましょう 今までMTMの経験がない先生方、矯正は複雑だからと敬遠なさっていませんか?使用する器具器材、針金の曲げのデザイン、ブラケットの位置づけ、固定の取り方など、 MTMを始めるには不安な要素が多くあるかと思います。MTMの経験がある先生方、「この歯をちょっと動かしたい。」とMTMを始めたのに動かしたい歯が思うように動かなかったり、動いてほしくない歯が動いてしまったりということはありませんでしたか?
MTMを成功させるには“動いてほしくない歯”に注目することが大切です。学生時代、歯科矯正学の講義で固定に関する話を延々とされて、“なんで歯を動かすのに固定?”と疑問を持ちませんでしたか。MTMのコツはその疑問の中にあります。日常臨床で使える手持ちのカードを増やしたい先生方に向けた実践編として、固定に目を向けつつ、よりシンプルにMTMを行うためにはどうするか、実際の症例を示しながらお話ししたいと思います。
関本恒夫・教 授 小児歯科学講座 N-37 「国が歯学教育に求めるもの」 現在の歯学教育は1996年に報告された21世紀医学・医療懇談会第1次報告「21世紀の命と健康を守る医療人の育成を目指して」に端を発し、その後2001年に「21世紀における医学・歯学教育の改善方策について」が提示され、モデル・コア・カリキュラムの策定,共用試験の実施,診療参加型臨床実習の改革、さらに大学教員の教育能力開発が導入され現在に至っている。現在の直近の歯学教育の課題としては、臨床実習終了後の技能を評価する共用試験の実施、各歯学部・歯科大学における教育内容を外部組織が評価する歯学教育認証評価の実施である。演者はこれまでこれらの教育改革に深く関わってきたので、国が歯学教育に何を求め、大学がどのような問題を抱えながら教育を行っているのかをお伝えし、真の歯科医師養成のための教育とは何なのか、歯学会会員とともに考える機会となれば幸いである。


田中聖至・准教授 小児歯科学講座 N-38 子ども虐待と小児歯科  近年小児虐待は増加の一途を辿っている。平成4年に1372件の発生件数だった全国の児童相談所における小児虐待相談件数は、20年の時を経て66,807件と60倍に増加している(平成25年度児童相談所での児童虐待件数、厚生労働省)。小児虐待の社会的認知が進んだ為、相談件数が増加したと厚生労働省は分析しているが、元々あった小児虐待が顕在化して来たに過ぎないとの見方も出来る。小児虐待増加の背景は、不況、未熟な親など様々であるが、小児虐待は乳幼児期に行われることが多いため、歳時健診、学校歯科健診、歯科医院受診時に発見される機会が多い。
特に、デンタルネグレクトの小児は、健診でないと発見する事は困難である。小児虐待は口腔周囲に徴候現すことが多いため、実例を交えて、注意すべき小児の態度、発見時の対応法、予防法、関係機関との連携についてご紹介させて頂きたい。



黒木淳子・准教授 小児歯科学講座 N-39 歯科からの食育―成長発育に応じた口の健康を食から考える― 近年,朝食を食べない,個食の増加,肥満傾向の増大等の事情に伴い,子どもの食生活の乱れや健康に関する懸念事項が見られるようになった。特に成長期にある子どもにとって,健全な食生活は健康な心身をはぐくむために欠かせないものである。そのような背景から,平成17年に食育基本法が施行され,子どもの健全な食生活の実現と豊かな人間形成を図るための取り組みが開始された。また日本歯科医師会では「歯科関係者のための食育推進支援ガイド」を作成し,栄養中心の課題以外,すなわち「どのようにして食べるか」という視点からの課題への食育支援を目指し,具体的指針を示している。今回は,小児歯科医の立場からの食育支援について,特に食べ方,味わい方を中心にお話しさせて頂きたい。


大越章吾・教 授 内科学講座 N-40 B型、C型肝炎治療の進歩と残された問題。 肝炎ウイルス感染は20世紀の国民病とまでいわれ、多くの患者が肝硬変や肝がんに苦しんできた。しかし昨今、内服の抗ウイルス薬の進歩によって、両方のウイルス感染が制圧される時代になっている。B型肝炎は抗ウイルス薬による耐性変異の出現が問題であったが、最近耐性の起きにくい抗ウイルス薬が使用されるようになり、殆どの患者においてウイルスの制御が可能になった。しかし、HBVは細胞に潜伏感染するため、完全に消失したように見えて、抗がん剤や免疫抑制剤によって再活性化することが知られるようになり、各医療施設に適切な対応が求められている。HCVはDAAと呼ばれる内服薬を2~3か月投与することによって、ほぼ100%の体内からの排除が得られ、撲滅時代へと突入している。しかしHCVの排除はHCV肝がんの撲滅を即意味するものではない。またHBV、HCVともに院内感染の主たる感染症であることは変わりなく、今日的な知識のUpdateが求められている。 N-41 脂肪肝とは?その臨床的意義は 脂肪肝は広く一般に知られた疾患である。人間ドックなどで、“肝臓に脂肪がたまっていますね。少しお酒控えましょうね。体重減らしましょうね。”というのは極めてありふれたやりとりである。脂肪肝に自覚症状はない。しかし“たかが脂肪肝。されど脂肪肝。”であり、疾患として極めて重要な側面を有している。  
この脂肪肝の疾患としての重要性は以下の2つである。
@ メタボリックシンドロームの部分症として、高血圧や心血管疾患、糖尿病などの代謝性疾患と密接な関係を有する。
A 脂肪肝の一部は肝硬変に移行し、肝がんの原因となる。
一方、医科病院では肝FibroScanという超音波検査機器を導入した。これは肝硬度と肝の脂肪化を数値化できるものであり、現在脂肪肝とメタボリックシンドロームや、睡眠時無呼吸症候群との関係について臨床研究を進めている。
長谷川勝彦・准教授 内科学講座 N-42 動脈硬化性疾患予防における歯科診療への期待 肥満・メタボリックシンドロームへの実践的対応 今日、日本人の肥満は深刻な問題となっている。肥満者は、脂質異常症、高血圧症、糖尿病を発症しやすい。過食や運動不足による内臓脂肪型肥満を原因としてインスリン抵抗性が惹起され、メタボリックシンドロームがおきる。メタボリックシンドロームと合併症である糖尿病、高血圧症、脂質異常症について、最近の診療ガイドラインを要約した。動脈硬化性疾患の予防のため、規則正しい生活、バランスのとれた食事、適度な運動による体重のコントロールと禁煙が大切である。歯科疾患の背景に潜む肥満・メタボリックシンドロームがうたがわれる症例を早期発見し、歯科と医科が連携して肥満対策や禁煙支援をおこない、メタボリックシンドロームの増悪予防につとめたいものである。 N-43 高齢者における最近の消化器内視鏡診断法の進歩と生活習慣と関連する上部消化管疾患 高齢化社会を迎え、今日における上部消化管内視鏡検査に関する話題について解説を行う。胃食道逆流症は、胃酸を含む胃内容物の逆流によって胸やけなどの症状がおきる疾患である。内視鏡検査で食道粘膜にびらん性の変化を認める逆流性食道炎の場合と、非びらん性胃食道逆流症の場合がある。高齢者の場合、食道裂孔ヘルニア、下部食道括約筋の弛緩、肥満により腹圧が上昇しやすい場合に症状がおきやすい。内臓脂肪蓄積型肥満であるメタボリックシンドローム、睡眠時無呼吸症、消化管運動の異常をきたす疾患では症状がおきやすい。経鼻細経内視鏡検査法は、嘔吐反射をおこしにくい利点があげられる。呼吸器系・循環器系のストレスが小さいことは、高齢者の内視鏡検査を実施する上で重要である。
廣野 玄・准教授 内科学講座 N-44 ヘリコバクター・ピロリ除菌後も胃内視鏡健診を受けましょう 胃癌の主因はヘリコバクター・ピロリ(以下H.pylori)の胃内持続感染であり、それによって慢性胃炎を発症し、長年の胃粘膜の慢性炎症性変化によって胃癌が惹起されることが知られている。一方、年1回の定期的な胃内視鏡健診は胃癌の早期発見・治療を可能とし、推奨されてきた。最近、H. pyloriの除菌が胃癌発生の危険性を軽減させることが明らかにされ、本邦では2013年2月よりH.pylori陽性慢性胃炎に対する除菌療法が保険適応となり、現在まで積極的に除菌が行われてきた。しかし、除菌後数年経た後も少数ながら胃癌の発生をみることがある。除菌後に発生した胃癌症例の特徴として、除菌時の年齢が高いこと、除菌時の慢性胃炎性変化(胃粘膜の萎縮性変化や腸上皮化生性変化)が高度であることなどが挙げられる。特にこのような場合、除菌後も積極的に定期的な胃内視鏡健診を受けることが重要である。



渡辺和彦・講 師 内科学講座 N-45 閉塞性睡眠時無呼吸症候群と消化器疾患の関連 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(以下OSAS)は睡眠中の上気道閉塞により無呼吸を反復し、日中の傾眠をきたし、重大な交通事故の原因となるなど社会的にも注目される疾患である。メタボリックシンドロームや脳血管障害、循環器疾患と密接な関連性を有しているが、消化管疾患の中で胃食道逆流症(以下GERD)の合併も20-40%と高率である。日本消化器病学会によるGERD診療ガイドラインではOSASの原因のひとつとしてGERDがステートメントされている。またGERDと睡眠障害の関連性も指摘され、その機序解明のための臨床的基礎研究が進んでいる。OSASに対して夜間持続陽圧治療(以下CPAP)が第一選択として行われ、当科でも日中の傾眠改善に効果を挙げているが、CPAP治療が上部消化管へ影響を及ぼす側面もあり、GERDに対する治療効果も指摘されている。
当科での臨床データとともに、OSASと、GERDをはじめとする消化器疾患の関連について解説する。



大竹雅広・教 授 外科学講座 N-46 乳がん検診と乳がん治療の現状 日本人の三人に一人が『がん』で亡くなる時代となりました。これまでは、「胃癌」や「大腸癌」、「肺癌」に多くの話題が集まっていましたが、最近では『乳がん』が注目を浴びています。有名な芸能人が乳がんにかかっていることを公表したおかげで、乳がんに関してのいろいろな情報がマスコミに流れています。残念ながら乳がんも、他のがんと等しく進行した状態では現在の医学でも治すことは困難です。しかし、早期発見によって治癒することが期待できるようにもなったばかりではなく、その治療法も大きく変化してきています。本講演では、あらためて「乳がんとは?」、「乳がん検診では何をされるのか?」そして現在の治療動向などについて基本からわかりやすくお話ししたいと思います。


五十嵐文雄・教 授 耳鼻咽喉科学 N-47 目で診る耳鼻咽喉科疾患 耳鼻咽喉科領域で視診可能な疾患を供覧し解説する。主な疾患は下記のとおりである。
耳科領域:耳前瘻孔、耳介血腫、耳介軟骨膜炎
鼻科領域:鼻出血、アレルギー性鼻炎、
口腔咽頭領域:口内粘膜疾患、口腔腫瘍、咽頭炎、扁桃炎
頸部領域:リンパ節炎、先天性腫瘤、良性腫瘍、悪性腫瘍
N-48 頸部腫瘤 頸部に腫瘤をきたす疾患は炎症性疾患、先天性疾患、良性腫瘍、悪性腫瘍に大別される。各疾患の年齢構成、性差、発生部位、腫瘤の性状など、臨床的特徴について症例を呈示して解説する。
宇野清博・教 授 総合診療科 N-49 歯科医療のスポーツへの関わり スポーツ歯学の主な目標として、顎・顔面・口腔領域でのスポーツ外傷の予防、スポーツによる健康づくりをサポートするための歯科医学的配慮、競技力の維持・向上をサポートするための歯科医学的配慮の三つが考えらます。
 今回は、スポーツ外傷の予防のために用いられるマウスガードに関するお話を中心に、我々歯科医師がスポーツの分野にどのようにかかわっていくべきか紹介させていただきます。



江面 晃・教 授 総合診療科 N-50 要介護者高齢者の継続的な口腔ケア
要介護高齢者の口腔ケアは,歯科治療後のADLの改善・QOLの向上にきわめて重要となり,介護負担の軽減にも関与する.また,口腔衛生状態の悪化は致命的ともなる誤嚥性肺炎の原因やインフルエンザの感染助長ともなる.要介護高齢者での口腔ケアのもつ役割は健常者に対するより全身的,多面的に大きく,本人の意識のみならず,家族・介護者の協力,多職種との連携が必要となる.口腔ケアは主体が本人,介護者を問わずコントロールが確実に実施されれば,良好な状態を維持することができる.しかし,ひとたび口腔ケアが中断されると元の状態にもどってしまうため,その継続が必要となる.
 継続可能な口腔ケアのプランの立案には,身体的要因,心理社会的要因,環境的要因の生活課題の要因分析を行うと共に,利用者の情報,介護者側の情報,第3者(医師の意見等)を加味し,総合的理解・判断によって行わなければならない。また,目標設定に際しては,短期目標をまず設定し,それとともに長期目標を設定する。口腔ケアを継続していくためにはアセスメント−口腔ケア−評価のサイクルを形成していくことが必要である.
 いずれにしても早期に口腔ケアプランを立案して,多職種の情報共有の下で継続していくことが利用者のADLの改善・QOLの向上および介護負担の軽減に繋がり,継続的な口腔ケアを実施して行くことが歯科医療の望まれている.講演では口腔ケアプラの立案方法を中心に話を進めたい.



佐藤友則・准教授 総合診療科 N-51 歯内治療はなぜ長引く事が多いのか 日々の臨床で、診断に苦慮し、解剖形態や様々な誘発因子が、歯内治療において大きな障壁となっています。日進月歩しながらも、今昔抱える問題も多い分野ですが、その際、「解剖学的特徴」、「悪習癖等による咬合誘発因子や歯質の脆弱化」、「切削器具における拡大形成の目安と操作」、「丁寧な根管洗浄」、「症状にあわせた貼薬選択」、「根管形態にあわせた緊密な根管充填」、「無菌的操作」を考慮され進めているでしょうか?常識的な事かもしれませんが、歯内治療における難治化、難症例と言われるものでは、いずれかの欠如で長期症例になっているものも少なくありません。本講演では、これらを取り巻く環境の対応、注意点を交えながら歯内治療の基礎的分野から日常臨床での症例をお話させて頂く予定です。 N-52 歯科医師臨床研修制度の現状 平成18年度から歯科医師臨床研修制度が必修化され、現在の法制度では、卒後1年目の歯科医師は前年の秋に行われるマッチングシステムにより決定した研修施設で、管理型施設を中心に、協力型施設との協力のもと研修を行っています。また本制度は5年に一度の見直しが行われ、研修制度の充実化に向け様々な取り組みが行われています。歯科保健医療を取り巻く環境変化とともに、様々に変化している事も周知しなければ行けません。そこで本講演では、歯科医師臨床研修制度の現状と変遷、新潟病院における臨床研修について、協力型施設で行われている研修状況など研修指導医、研修歯科医から寄せられた意見も交え講演させて頂きたいと思います。
大森みさき・准教授 総合診療科 N-53 口臭を訴える患者の診断と治療 近年の過剰とも思える清潔志向のひとつとして口臭を気にする人は増加傾向がみられます。それに伴って口臭を主訴として歯科医院を訪れる患者も増加し、齲蝕、歯周疾患に次ぐ主訴項目にあげられてきています。口臭の原因については8割以上が口腔内に存在することが多くの調査からわかってきました。しかしながら、これらに対する診断や治療方針については明確ではありませんでした。心因性の口臭患者のケアは単純ではありませんが,口腔に原因する真性口臭症患者はほとんど治癒します。新潟歯学部では1997年より口臭治療のための外来が設置され口臭を訴える患者の対応にあたっています。口臭を訴えて来院する患者の診断・治療に関しての方針も徐々に定まってきました。口臭を主訴とする患者の特徴や対応への注意点も含め、初診から診断、治療への流れについてお話したいと思います。
N-54 歯周病への喫煙の影響と歯科医院で行う禁煙支援  WHOでは喫煙を「病気の原因の中で予防できる最大かつ単一のもの」としています。日本歯周病学会では2006年に定めた歯周病分類システムの中で喫煙は歯周病の最大の環境リスクファクターであるという認識に基づき、歯周炎の分類の1つとして喫煙関連歯周炎を提示しました。これに基づき喫煙関連歯周炎として歯科医師国家試験にも患者の喫煙についての対応が出題される昨今、喫煙の害のみならず、禁煙支援も含めた教育が歯科大学では必要とされています。患者の喫煙状況の確認、喫煙者への喫煙の害についての医療側からの情報提供は、歯周治療の反応性や予後を向上させるとともに、歯科での禁煙推進のためにも情報の整理は重要であると考えます。
 口腔内、特に歯周組織に対して喫煙が与える影響を中心に概説し、かかりつけ歯科医院で行う禁煙支援の必要性、方法についてお話したいと思います。
清水公夫・准教授 総合診療科 N-55 いびき症とその歯科的対応  いびきは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者が診療に訪れるもっとも大きな原因である。そのいびきの音は周囲の人に不快を与えるだけでなく眠りの質に大きく関与する。
さらにこの疾患の社会的な問題点としては、過度の日中の傾眠に起因する交通事故発生率の増加や決断力低下による仕事の能率の低下、働き盛りにみられる合併症や死亡率の増加などの問題が大きく、最近では、JR西日本の新幹線運転手の居眠り運転の事件がこの例である。
いびき症やSASに対する対応として歯科的口腔内装置オーラルアプライアンス(OA)がある。このOAは簡便で携帯も容易なためその応用と装着は増加することが予想される。
そこで今回、OAを中心にいびき症に対する歯科的対応について講演させていただきます。



永田和裕・准教授 総合診療科 N-56 習癖指導と咬合管理による,チェアサイドで行う力のコントロール 歯科治療を行った後に,何十年も良好な口腔の状態を維持している患者がいる一方で,十分な口腔管理を行っているにもかかわらず,次々にトラブルが継続し,残存歯を喪失していく患者さんがいます.これらの症例では,歯根や補綴物の破折が多発し,トラブルには,生体や補綴物の許容を超えた“過剰な力”が関与すると推察されています.そのため,これら過剰かつ不適切な力を評価しコントロールすることが,現在長期的な口腔の健康において不可欠と考えられるようになっています.
“過剰な力”は,睡眠時あるいは日中のブラキシズムや,強い咀嚼や激しいスポーツなど,原因やメカニズムが異なるものが複数存在します.また,咬合異常も力が局在することにより間接的に力の問題を引き起こします.従って,“過剰な力”を効果的にコントロールするためには,個々の患者において,力の発生するメカニズムを推定し,それに適した対処を行う必要があります.
本講演では,過剰なかつ不正な力の起因する,種々の障害について症例を示して説明するととともに,力のメカニズムに応じた対処法について解説を行います.
N-57 審美義歯入門.ノンクラスプデンチャーと磁性アタッチメント 高齢人口の増加と共に、インプラントの適用が困難な有病者の数は今後も増加すると予想されています。このような環境の中、安全かつ比較的低コストの可撤性義歯による欠損補綴は、現在でも不可欠な治療法ですが、審美性の観点から、クラスプが露出し老いの象徴である義歯に対して、強い拒否感を訴える患者さんも増加しています。現在までに、メタルクラスプとは異なる数種の支台装置が開発され、臨床応用されてきましたが、いずれもクラスプデンチャーとは異なる長所と短所が存在し、不適切な使用は義歯の機能低下や支台歯の喪失に繋がる場合があります。
菅原佳広・准教授 総合診療科 N-58 日常臨床におけるマイクロスコープ治療の魅力 マイクロスコープを用いた精密な診療が注目されてきていますが、マイクロスコープを使用すれば、誰でもすぐにすばらしい治療ができるようになるわけではありません。ほんの少しだけコンセプトを理解し,使いこなしていく必要があります。
今回は、マイクロスコープの構造や使用法、機種の選択などの基本的な内容とオールセラミッククラウンの形成やダイレクトボンディング、複雑な根管治療などの動画を用いた臨床的な内容について講演させていただきたいと思います。これら動画はマイクロスコープを使用しない場合でも参考にして頂ける内容だと思います.
 今回の講演で1人でも多くの先生にマイクロスコープを知っていただき御自身の臨床のステップアップにつながれば幸いと思っております。



猪子芳美・准教授 総合診療科 N-59 成功する睡眠時無呼吸症候群の口腔内装置治療−睡眠学会認定歯科医が教える治療の勘どころ− 2004年4月に睡眠時無呼吸症候群(OSAS)治療用の口腔内装置が社会保険診療報酬に導入されてから今日まで、医科歯科連携の医療が行われております。しかしながら、現在もなお、歯科医師の睡眠に対する知識不足は否めず、治療の失敗例も耳に致します。
そこでこの講演では、実際の口腔内装置の作製方法、治療のHow to、 医科との連携に必要となるOSASに関する基本的な知識について丁寧にわかりやすく解説させていただきます。さらに、さまざまな口腔内の状況に合わせた口腔内装置の設計例、医科との情報提供書の文例、患者への問診票や口腔内装置の患者説明書なども提示させていただき、明日からの臨床にすぐ利用できる講演内容となっております。
N-60 咬合と咀嚼 ―歯科医師が考える食育について― よく噛んで食べることは、丈夫な歯や顎を作り、生活習慣病の危険因子である肥満を防止し、認知症の予防やストレス解消にも繋がります。さらに、人間を守る様々なパワーを秘めていることが近年の研究で示されております。また、健康長寿と豊かな食生活を送るために食育への取り組みが各方面で行われており、その運動の一つとしてひと口30回咀嚼する“噛ミング30(カミングサンマル)”というキャッチフレーズが提唱されています。ひと口30回以上の咀嚼を行うためには、咬合や顎口腔系が健全に機能することが必須であると考え、演者は30回咀嚼に注目し、咀嚼と咬合と顎口腔系機能について検証してきました。そこで本講演では、咬合と咀嚼との関係について解説するとともに、食育支援についても講義させていただきます。
海老原 隆・准教授 総合診療科 N-61 ホワイトニングの実際 近年、審美性への関心の高まりとともに歯を白くしたいと希望する患者が増えてきており、インターネットで“ホワイトニング”を検索すると、かなりの件数がヒットされます。歯を削ることへの抵抗をもつ患者さんがより増えてきている現状において、ホワイトニングは、MIの概念からもたいへん関心のある審美的治療であると思われます。また、日本歯科審美学会より歯科衛生士を対象としたホワイトニングコーディネーターの認定資格が始まり、全国ですでに5000名以上も誕生しました。歯科衛生士のホワイトニングに対する関心がたいへん高いことが伺われます。今回、ホワイトニング(無髄歯:ウォーキングブリーチ、有髄歯:オフィスブリーチング、ホームブリーチング)について、適応症、臨床術式、メインテナンス、色差計を用いた臨床評価などを解説いたします。また、最近臨床応用されている歯のマニキュアについても解説したいと思います。


二宮一智・准教授 総合診療科 N-62 「高齢者・有病者の留意点」 歯科治療時の偶発症は、そのほとんどが予防可能であること、また、ひとたび発症した偶発症に対する処置は、専門的な技能を要することも多いことから、偶発症の発生を未然に防ぐことは極めて重要です。
 超高齢化社会の到来や医療形態の変化に伴い、歯科医院を受診する患者さんも多様化しており、必然的に歯科治療に配慮すべき事項も多くなっています。 
一般の歯科治療において、適切な医科歯科連携により患者の全身状態や治療歴を正確に把握することが求められます。そのためには、必要な診療情報を得るための医学的基礎知識の修得がきわめて重要となります。
 当大学における医療安全の状況を紹介するとともに、有病者の歯科治療において、疾患・病態ごとの予防策や対処法、更に偶発症が発症した時の一般的な対処法について説明します。
N-63 いわゆる歯科用金属アレルギー患者の治療の現況 歯科用金属アレルギー患者に対する診査、診断と治療に関して当病院の歯科アレルギー治療外来の現況を紹介する。内容は(1)アレルギー疾患の基礎(2)診査・診断法(3)皮膚・粘膜関連疾患の概要(4)歯性病巣感染との鑑別(5)口腔内金属は交換するべきか?否か?のポイント(5)歯科アレルギー治療外来の現況
渥美陽二郎・講 師 総合診療科 N-64 スポーツに対する歯科医学的サポートについて スポーツ歯科医学とはFDI(国際歯科連盟)が「すべてのスポーツ競技を通じて適切なスポーツ活動の選択、助言、診査、管理、監督と、また必要に応じて治療を行い、さらに、専門的情報を提供することを目的とする特別な歯科医学の部門」と定義しております。本国ではスポーツ基本法に「歯学」が盛り込まれ、又、日本体育協会において日体協公認スポーツデンティストの制度が発足しました。そのため、今後はさらにスポーツに対する歯科医学的サポートが必要になると考えられます。
 日本歯科大学新潟病院では、平成10年4月より、スポーツ歯科外来を開設し、顎口腔領域のスポーツ外傷の予防として有効なマウスガードの普及と提供の他、スポーツ歯科医学の啓蒙、研究、教育を行っています。本講演では、スポーツに対する歯科医学的サポートと題し、スポーツ歯科医学の歴史と現状、マウスガードに関する内容の他、顎口腔系と全身との関連性に対してバイオメカニクスおよび筋電図学的検討、またマウスガードの外傷予防効果などスポーツ歯科外来で行ってきた研究内容も合わせて講演したいと思います。



高塩智子・講 師 総合診療科 N-65 歯周治療におけるメインテナンス 歯周治療後、一度歯周組織が改善された症例に対し、定期的なプロフェッショナルケアを継続して実施することが歯周組織の健康を維持する上で重要な役割を果たすことが知られている。歯周治療後のメインテナンスやSPTを行っていく中で、歯周治療の長期的な予後や長期的な変化について観察した結果について述べる。


石井瑞樹・講 師 総合診療科 N-66 「医療情報・医療管理の基礎とこれからの情報活用を考える」 医学・医療分野における情報を一般的に医療情報とよぶが,昨今,ICTを医療に応用する,いわゆる医療の情報化が著しく進歩している。診療に伴い生じる患者情報を扱う医療機関においては,その情報は厳重に保護されるべきであり,適正な管理が必要不可欠である。このことから,医療従事者として医療情報に関する知識だけでなく,その応用についても幅広く理解し,膨大な情報収集と管理および適正な利用に取り組んでいかなければならない。医療情報学・医療管理学の視点から,医療情報の区分,特性,情報活用などの基本的知識について学ぶとともに,個人情報保護の基本概念や,地域や多職種連携が進む中での情報共有の重要性についても考える。


水橋 亮・講 師 総合診療科 N-67 スポーツ歯科医学が寄与できること スポーツ歯科医学という言葉を耳にされたことはあるでしょう。しかし、歯科医学の部門としてはまだ歴史が浅く、大学での学生教育も十分ではないかもしれません。日本歯科大学新潟病院では、スポーツ歯科外来がスポーツ歯学の啓蒙、研究、教育、マウスガードの提供などをおこなっています。
 講演ではマウスガードの製作方法を中心に、歯科医師がスポーツ歯科医学からスポーツに寄与できる事についてお話したいと思います。



河野正己・教 授 口腔外科 N-68 睡眠時無呼吸症候群に関する歯科と医科の連携医療 いびき症は、単純いびき症、上気道抵抗症候群、閉塞型睡眠時無呼吸症候群の三病態に分類され、本邦での有病者は全病態で1,400万人に達し、最も重症で社会的問題にもなった閉塞型睡眠時無呼吸症候群でも200万人いる。いびき症の治療では口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(昭和62年〜)と口腔内装置(平成17年〜)に歯科健康保険の適用が認められているが、前者は歯科医師の判断のみで治療介入ができるのに対し、後者は医師が治療適応と認めた場合のみ歯科健康保険が適用されるため、医師よりの依頼がないと治療に介入できない現状である。この講演では睡眠時無呼吸症候群の治療を行っている睡眠医療専門医師との連携に必要な知識や技術を詳細に解説することにより、各地の日本睡眠学会所属の医師との連携治療体制を構築する手助けをしたいと考えている。
N-69 睡眠時無呼吸症候群の口腔内装置−作製、管理指導、予後判定の実際− 睡眠時無呼吸症候群の治療用の口腔内装置は平成17年に歯科保険の適用が認められて広く普及してきた。しかしながら、装置の作製や調整の間違いで治療効果が不十分となったり、不適切な管理指導で歯周疾患や顎関節症などの副症状が生じたり、予後判定の不備で原疾患(睡眠時無呼吸症候群)が進行して重大な合併症を招いたりするトラブルが報告されている。
この講演では、治療効果の高い口腔内装置の製作法や調整法、経過観察時の診察法や副症状の対処法など安全な管理指導法、そして、歯科外来で可能な睡眠日誌や簡易睡眠ポリグラフによる予後判定法を解説する。さらに、口腔内装置の長期予後の判定に必要な使用状況の記録(コンプライアンス測定)が可能な小型データ−ロガ−付きの口腔内装置も紹介する。
 
山口 晃・教 授 口腔外科 N-70 こんな症状がみられたら −口腔病変の診断と治療− 医療の基本は正しい診断を下し,適切な治療を行うことであります.特に診断は最も重要であり,たとえどんなに高度な治療技術を持っていても診断が誤っていれば,その技術は活かされないばかりか,むしろ疾患を悪化させ,場合によっては致命的となることもあります.顎口腔領域には意外に多くの,そして多様な疾患が発現し,また,全身疾患の部分症状が現れる場合もあります.一方,口腔病変は種々の刺激や二次感染などにより修飾を受けやすく,異なる疾患でも類似した症状を呈する場合も多いため,その鑑別が困難となることもしばしばあります.
 そこで,日常臨床でよく見られる疼痛,腫脹,潰瘍,出血などの症状を中心に“どのような症状の場合にどのような疾患を疑うか”について臨床スライドを用いて解説し,さらに治療のポイント等についても言及したいと思っております.
N-71 抜歯に関する耳より情報〜知らないと大変なことになる!? ―抗血栓療法とビスフォスフォネート製剤― 近年の医学の進歩は様々な基礎疾患をコントロール可能なものに変えてきています。
一方で、食生活を始めとする生活習慣の変化やストレス等により、むしろ生活習慣病や種々の基礎疾患の有病率は増加しており、これらのことは『一見健康そうだが思わぬ疾患を抱えている患者さん』が歯科外来を受診することを意味しています。
これらの方々の特徴としては、健常者と異なり予備能が少なく、また連用薬剤との関係から簡単な抜歯でも治癒不全や深刻な事態を引き起こし易いことが挙げられます。
 そこで、特に最近話題となっているワーファリンやアスピリン等の抗血栓療法中の患者さんや、骨粗鬆症でビスホスホネート製剤を使用している患者さんを中心に、抜歯や歯科治療上の注意点について解説し、事故のない、安全で安心な臨床に役立てて頂ければと考えております。
戸谷収ニ・准教授 口腔外科 N-72 「ドライマウスからはじめよう―口腔ケアやオーラルフレイルへのアプローチ−」 超高齢化社会において歯科医療は変革が必要となり、齲蝕・歯周病・補綴治療といった従来型の歯科医療から周術期口腔機能管理として「口腔ケア」の推進が求められています。その中で「口がかわく」といったドライマウス(口腔乾燥)への対応は口腔ケアの根幹につながります。ドライマウスの対応なくして、歯科医療は成り立たないといっても過言ではないと思います。
 また近年では、食事摂取困難から生活機能低下につながる新しい概念として、口腔の虚弱(オーラルフレイル)が注目され、口腔ケアでの予防が求められています。ドライマウス患者も高齢者が多く、口腔乾燥感の自覚が少ない初期には診断されず、長期口腔環境の悪化から口腔の機能低下につながっていきます。故にドライマウスもオーラルフレイルにつながる原因になると考えられます。本講演では、良質な口腔ケアを提供するためのドライマウス(口腔乾燥)診療について紹介したいと思います。
N-73 医療事故防止につなげよう-歯科医師に必要な医療安全の知識- 相次ぐ医療事故報道のなかで、国民の医療に対する不信感は膨らむばかりで、多くの医療機関では、以前にも増して安全管理システムを整備・強化し医療事故防止に努めてきています。それでも、次々に医療事故が発生しているのが現状です。日本の「医療安全」のきっかけとなった医療事故として、1999年の横浜市立大学附属病院において患者取り違えによる目的の異なる手術が施行される事故が発生したことに始まります。その後も事後が縦続けて発生しました。2001年、国は「医療安全推進年」として総合的医療安全対策を推進することとなり、現在の医療安全対策へと繋がっています。
歯科医業を行う医療機関においても、安全で安心な質の高い歯科医療提供体制を整備することが求められています。そこで、本講演では歯科医師に必要な医療安全に関する知識と当院でのインシデントレポートから抜粋した実際のケースを紹介して対応や取り組みについてお話しします。
水谷太尊・准教授 口腔外科 N-74 かかりつけ歯科医がみつける口腔癌 現在、日本人の2人に1人が癌にかかると言われています。全ての癌に対する口腔癌の占める割合は1〜3%で、年間7000人が新たに発病し3000人が命を落としています。たとえ癌を制御できたとしても、発見が遅れた進行例では話すこと食べることといった日常の楽しみが大きく奪われてしまいます。
 口腔癌は設備の整った病院の口腔外科や耳鼻咽喉科、頭頚部外科で治療を行いますが、多くの場合は第一発見者はかかりつけ歯科医です。すでに口腔癌を診察した経験のある先生方もいらっしゃることと思います。口腔癌は消化器癌などに比べ肉眼的にある程度の診断が可能で、かかりつけ歯科医が早期に発見するか否かが予後に大きく左右します。そして見落としや誤った対応は患者とのトラブルにもつながりかねません。また最近は、マスメディア、インターネットの情報が氾濫し、自分も口腔癌ではないかと心配し、かりつけ歯科医に相談する患者も多くなっています。
 この講演では一般歯科医が知っておくべき口腔癌の検査、診断、治療を実際の流れに沿ってお話しいたします。
 みなさんの歯科医院にも必ず口腔癌の患者は来院します。口腔の健康を守る「かかりつけ歯科医」が患者さんの命を救うことができるのです。
N-75 実例で学ぶ歯科医療リスクマネージメント 医療安全に関して歯科医師に課せられる要件は多く、私たちは様々なリスクを背負って診療をしています。多くの先生方は患者とのトラブルを多少は経験しているはずです。実際の医療トラブルの中で訴訟に至る事例は、全体で年間約1000件,このうち歯科に関するものは1割弱と言われています。医療の多様化の側面として,患者の感情的葛藤や日常的な苦情・トラブルが増えている現在,いかにして患者(相手)と歯科医医院(自分とスタッフ)を守るかが課題となっています。
今回の講演では歯科における医療安全対策、院内感染対策の現状を全員で共有し,あらためて安全な歯科医療のあり方を考える機会にしたいと思います。前半は診療時に起きるインシデント・アクシデントから特に発生の多い「誤飲」を中心に、後半は院内感染対策に関して「スタンダードプリコーション」と「職業感染対策」について、それぞれ実例を交えてお話し致します。
小根山隆浩・講 師 口腔外科 N-76 がん患者の歯科治療  外科処置の注意点 2人に1人ががんに罹患する時代となり、がん患者の歯科治療を行う機会も多いと思います。新たな治療法や薬の開発により、延命も可能となり、さらにがん患者が増え、歯科治療に苦慮することが予想されます。
 平成24年度の診療報酬改定で、医科歯科連携として周術期口腔機能管理が導入され、研修を受けた先生方も多いと思いますが、実際の診療に生かされているでしょうか。おそらく、がん治療の複雑さや聞き慣れない薬、ガイドラインが存在しないことなどで、よくわからないのが実状ではないでしょうか。
 そこで、特に外科処置時に注意が必要な薬と対応方法を中心に、口腔外科専門医とがん治療認定医の立場から、実際の症例を提示しながらご説明できればと思います。高齢化により、薬を制する者が歯科治療を制す時代なのかもしれません。実際の治療には経験や多少の度胸も必要ですが、新たな領域へ足を踏み入れてみるのはどうでしょうか。
N-77 口腔外科医が見た東日本大震災検死活動  何を考え何をしたのか 検死とはいったいなんでしょうか。東日本大震災が発生するまで大学病院で働く私には無縁のことでした。なぜ、東日本大震災の検死活動に参加することになったのか、また、そこで何を感じ、何を行ったのかについて講演したいと思います。
 検死は歯科医療の一つですが、治療するという医療行為とは性質の異なるものです。また、公に報道されることもありませんので、具体的な検死を見ることも経験することもまずありません。そこで、私が実際に行った検死活動について、当時の写真や映像を交えてお話できればと思います。
 昨今、医学会では根拠が重視されておりますが、災害医療に関する根拠は確立されたとは言えず、あるのは経験です。しかし、この経験をつなぐことで今後の災害医療の根拠が作られるものと思います。明日にも発生するかもしれない災害への心の準備ができるのではないでしょうか。
高田正典・講 師 口腔外科 N-78 もしもの時の一次救命処置の重要性 スキル (AED使用も含めた) 高齢化社会を迎え歯科治療を行なう患者も重複する疾患を抱え、背景は複雑です。歯科医療において外科、麻酔手技の頻度は多く、それに伴う患者への負担は多大と思われます。もし診療所で患者が心肺停止に陥った場合、何を始めに行なえばいいのか。心肺停止から時間の経過とともに患者の社会復帰は困難になり、医療従事者の責任が問われます。昨今AEDの公共機関での設置が増加しており、一般人の関心も高く、救命処置の講習会などの参加も増えているのが現状です。医療従事者として如何なるときも対応できるスキルを身につける。


佐藤英明・講 師 口腔外科 N-79 外傷に強くなる!
日常診療の中でよく遭遇するのが、交通事故をはじめ、作業事故やスポーツ、さらに転倒やけんかなどにおける歯の損傷、粘膜の損傷、皮膚の損傷や顎骨の損傷です。外傷は緊急性を要し、予約患者さんを待たせ対応しなければならず、さらには予想以上に処置時間もかかります。また、合併症・後遺症も多く、長期経過を診なければならず、日常診療の中では負担に感じる疾患です。私は、口腔外科という立場から夜間の急患対応や、総合病院における出張経験により、多くの外傷患者さんを診て来ました。そこで今までの経験を生かし、外傷に対する診断や応急処置を含めた処置方法、経過観察のポイントなどを含めご説明し、皆様の実力アップに貢献できればと考えております。


三瓶伸也・講 師 小児歯科 N-80 乳歯早期喪失への対応  保隙装置の適用について 近年,乳歯齲蝕は減少かつ軽症化の傾向にある。ところが,齲蝕によって早期に乳歯の抜去を余儀なくされる症例は今なお存在している。
乳歯の早期喪失は喪失部位への隣接歯の傾斜移動や対合歯の挺出などを引き起こし,歯列不正や不正咬合の要因となり得る。そこで,早期喪失部の空隙を保持し,後継永久歯の萌出余地を維持することは,健全な歯列・咬合を育成する上で大変重要なことであるといえる。そのため様々な種類の保隙装置が応用され,喪失歯の歯種,歯数,喪失部位と喪失時期により使い分けられている。
今回は、平成26年歯科診療報酬改定で保険適用となったループ型保隙装置に加え、それ以外の各種保隙装置の臨床における対応法についても紹介する。



大橋 誠・准教授 歯科麻酔・全身管理科 N-81 「局所麻酔と全身疾患」有病者歯科医療の安全性について考える 昭和22〜24年生まれの団塊世代が65歳以上になった平成24年以降,日本は世界でも類を見ない高齢社会に突入した。歯科医院に来院される患者も基礎疾患を持たない患者がむしろ珍しい時代の到来である。そのため、これからの歯科臨床では神経原性ショックやアナフィラキシーショック等,従来言われてきた全身的偶発症への対応だけでなく,高血圧や狭心症,脳卒中など基礎疾患の急性増悪への対処も必須となる。本講演では日本歯科麻酔学会の報告で歯科患者の死因分析の1・2位を占めた心不全・脳血管障害を中心に有病者歯科医療の安全性について、医科歯科連携を含め概説する。 N-82 障害児・障害者歯科医療における全身管理 平成23年8月の障害者基本法の改正に伴い,平成25年4月に「障害者自立支援法」は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」に改正され,これまで以上に障害児・障害者が社会の中に出て地域社会と共生する機運が高まっている。このため我々歯科界においても障害児・障害者に対してサービスを提供する機会が格段に増加している。しかしながら障害と一言でいってもその内容は多岐にわたっており診療中の全身管理においては,障害の程度と診療内容によって症例毎に検討・工夫が欠かせないのが現状である。本講演では本院における障害児・障害者歯科医療の内容について概説し,安全に資する全身管理法について論ずる予定である。
高橋靖之・講 師 歯科麻酔・全身管理科 N-83 歯科診療時のモニタリングの活用  有病者リスクに対応するために 歯科診療中は治療に対する不安感,恐怖心などの精神的なストレス,局所麻酔時および治療中の疼痛刺激,外科的侵襲などの身体的ストレス,局所麻酔薬に添加されたアドレナリンなどにより患者の全身状態が刻々と変化する.
 呼吸状態,循環状態の変化は全身的偶発症を発症する.特に基礎疾患を有する患者は安全域が狭く,わずかな変化でも重篤な偶発症が起こりうる.
モニタリングは,このような全身状態の変化を客観的に評価し偶発症の発生を未然に防ぎ,患者の安全性を確保するために有用である.
 今回,バイタルサインの意義およびモニタリングについて,有病者の管理上の留意点と合わせて解説したい.



小椋一朗・准教授 放射線科 N-84 明日から使えるパノラマエックス線写真による画像診断 パノラマエックス線検査は,歯や顎骨病変,上顎洞病変の鑑別診断,インプラントの術前検査や顎関節症のスクリーニング検査等のみならず,患者さんへの病状説明の資料としても,毎日の歯科臨床において必須の画像検査法です。同検査法は回転断層撮影であるため,撮影条件や位置付けにより様々な障害陰影が生じ,読影には注意が必要となります。しかしながら,歯科臨床医が正常エックス線解剖や鑑別診断およびインプラント治療や顎関節症に必要なパノラマエックス線写真による読影を,被曝の概念も含めて基礎から学ぶ機会は少ないように思われます。
今回の講演会では,日常歯科臨床に必修のパノラマエックス線検査法を基本から習熟するために,正常解剖像や障害陰影,臨床において鑑別を必要とする歯や顎骨病変等について講義を行います。もう一度パノラマエックス線検査についてブラッシュアップをはかり,日常の歯科臨床に役立てていただきたいと思います。



白野美和・准教授 訪問歯科・口腔ケア科 N-85 訪問歯科診療の進め方 近年、在宅歯科医療のニーズはますます高まっていますが、訪問診療を行うことに躊躇する歯科医師、開始したものの戸惑う歯科医師が多いのが現状です。訪問診療開始時に遭遇する問題として多くあげられるものには、治療計画の立て方(どこまで行うべきか?)、保険請求が煩雑(介護保険が必要?文書提供は何が必要?)などがあります。
 講演では訪問診療における口腔ケア、義歯、観血処置等についての治療計画の考え方、また、保険請求の解釈についてお話させていただきます。
N-86 歯科と認知症 本講演では認知症の基礎知識から近年の研究で示されている認知症と歯科との関係、認知症患者の歯科臨床における問題とその対応について、日常の訪問歯科診療での体験も交えながらお話しをさせていただきたいと思います。
廣安一彦・准教授 口腔インプラント科 N-87 ―インプラント治療の現状とこれから― インプラント治療が臨床に応用されてから約50年が経過しました。1990年代には急速に全世界的な規模で拡大しました。日本においては2000年前後のインプラントバブル期に急速に普及しましたが、震災後の落ち込みやトラブル症例のマスコミ報道などにより、現在では落ち着きつつあります。それでも今なお歯科分野の中では、先端技術や材料の開発・研究が盛んな分野であり、現在でももっとも進歩している領域だと考えております。
 そこで現在行われているインプラント治療の流れとこれからの方向性について提示し、インプラント治療をどのようにとらえていくのか?また、そこから日常臨床においてどのようにかかわりあうことができるかについてご教示したいと考えております。
先生方の日常臨床の一助になれば幸いです。